りゅーとぴあ開館20周年記念 NHK交響楽団演奏会

2018.10.07
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
午後 4時開演(午後 3時15分開場)

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モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》序曲
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 KV 219「トルコ風」*
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98

* 辻 彩奈[Vn]
NHK交響楽団
http://www.saf.or.jp/saitama/stages/detail/4942

演奏会お問い合わせ先: りゅーとぴあチケット専用ダイヤル TEL:025-224-5521

【道義より】

マーラー8番の次の日朝10時からN響と練習、埼玉と、新潟のリュートピアで
メインがヨーロッパ音楽のど真ん中 ブラームス4番。
序曲がドンジョバンニ、コンチェルトが最近売り出しの辻彩奈20歳。彼女はシベリウス
で共演した時よりも良かった。モーツアルトが向いているのは音楽家として良いこと。
埼玉会館では、ゲネプロですったもんだした。ソリストが聞こえない!!
ブラームスもせっかく伊皿子のN響スタジオでの練習で方向を定めた音が全然、ない!
振りながら、、何故だ、、、何故、、、、だの思いが駆け巡る。
2楽章からホルンと木管のロマンティックな厚いバランスも分離、8本のコントラバスも
無きに等しい響き・・・・練習を中断しての、山台の変更、ホルンの場所の試行錯誤
等々・・・。
結論を言えば、埼玉会館ホールの最近のリニューアルに伴い座席が新品になり、
お客のいないゲネプロでは昔の京都会館並みのドライな響きとなり、逆に舞台上では
飽和状態の音が渦巻いたというわけであった。(練習の後半からそれにすこし気が付いた)
思った通りお客さんが入ってそれぞれの肉体が反射板の役目をしてくれたようで、
本番は目覚ましい改善!素晴らしい一体感で音楽を届けられた。やはり音楽は、
観衆と共に作るものとの典型的な証拠。
一世代前のN響だったらこんなすったもんだには「余計な引っ掻き回しをすんな!」
的な反発があったと思うが、今回も実に皆「何とかしたい」という意欲を見せてくれて
井上も意を強くした本番だった。

オーケストラというものは常に、社会の一歩先を行かねばならない。
今回、客演コンサートマスターであったウィーンフィルのライナーキュッヘルさんも
言っていたが、30年前はウィーンフィルは皆ウィーン人だった。
今は東欧はもとより色々とインターナショナルになっている。
女性も入団し、変化している・・・・・良くも悪くも。
悪い面は・・・知らないものに対して閉鎖的だったし、音つくりも田舎っぽい面が
強かった。良いところはもちろんウィーンの味。男の集団なのに色っぽかった音色や、
オペラで鍛えたアンサンブル能力が、首席奏者に頼って音楽を推進するという伝統を
もたらし実に個性的であった。ムジークフェラインザールも大いに助けになっていた。
翻って東京のNO1オケであらねばならないN響も、学ぶという意味での外人さん奏者が
何人かいた過去の事は言わない、いま非常に純血な面が強い。
演奏力や表現力はキュッヘル氏が言うように「何でもできる」・・・なんでも要求される
現代のオーケストラの看板をしょっているからそれは「良い事」として捉える。
が、例えばいざドイツ的な音楽表現を強く内蔵する音楽になったとき、以前よりもN響の
持つゴツゴツした個性希薄になったと思える。
でも、そんなこと構ったこっちゃない!
昔が良かったなんて一つも思っていない!今必要なのは実はさらに深い意味で柔軟な態度。

例えてみれば、

能楽の流派がそれぞれ地方の武家社会によって成り立っていた時代から、時の変遷と
ともに流派がそれぞれ別では成り立たなくなり、いまは多くのスタイルの混濁した状態で、
古い上演方法だけ、形だけ守っているの同じだと、なぞって考えても良いのではないか?
失礼、、、、、
お能にもオーケストラにも実はそんな後ろ向きな人はいない。ほとんど全員、前向きだ。
だが、皆人間だ。
人の中に善と悪が住んでいるように、又はソナタ形式に主題が2つあるように、人間
という弱い存在は居心地の良い方へとなびいてしまう。
真の指揮者というものは、そのような「空気」に常に戦いを挑まねばならない。
自分の中にあるそれに対しても。
今回の4番は最後が長調で終わらない。解決はなく、ブラームスの心の葛藤は
そのままに作品になり、墓碑のように立ち尽くして終わる。
予定調和の多いクラシック音楽の中にあって、井上が好むのはこのような音楽、、、
かもしれない。リュートピアは開館20周年で今回、切符は100%の売れ行き
同じく10月に92周年を祝った老オケ?は素晴らしい音響に嬉々としたのだった。
アンコールはピッチカートポルカ チンチン チンチン チンチン 沈々 
として時は過ぎゆく。

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