芸劇ウインド・オーケストラ
メンデルスゾーン : 吹奏楽のための序曲
三善晃 : クロス・バイ・マーチ
権代敦彦 : Time No Longer ~もはや時がない~for wind orchestra op.145(委嘱・世界初演)
チャイコフスキー : バレエ音楽抜粋
僕は吹奏楽には距離を置いてきた。長くなるがこのチャンスに書いておく。
吹奏楽や吹奏楽団の音色そのものが嫌いなわけではない。若い頃のLPレコード時代にパリの吹奏楽団の音などに心躍ったことを覚えている。
でも吹奏楽団の常套的な演奏のやり方にはあまりの沢山の間違いがあるようにしか思えない。なぜクラリネットばかり多く、フルートが少ない、オーボエはとても少なく、イングリッシュホルンもほとんど見かけない、何故かコントラバスが1~2本意味なく違和感をもって弾いているし、譜面台も一人ずつ置かれていて邪魔くさい、移調楽器ばかりでわけのわからないスコアで指揮しなくてはならないし、何故かみんなお客さんの方を向かず円陣を組んで誰に向かって演奏しているかわからない等々・・・・の疑問すべてを改革するには莫大なエネルギーが必要に思えるがそこまでの愛情を持てないのは、やはり!プログラムを作るのが難しすぎるからだ。感動に向かう作品があまりに少ないのだ。近代の作曲家も自国の伝統楽器を入れた作品など皆無だし(オーケストラには多々ある...誤解を恐れずに書けば北朝鮮の楽団はほとんどそれが主流だ)
勿論管楽器のみの作品はモーツアルトまでさかのぼってもいやもっとガブリエルなどまでさかのぼればたくさんあった音楽歴史なのだが。
たぶんアメリカナイズされているのだろう。
吹奏楽といえば行進曲風な作品が大勢を占め、かっこよい!音が大きい!明るい!切れ味が良い!ことに主眼があるらしい作品が多く、何か感動がない。なんだかチアガールが出てきそうな感じのものが多いが僕はそれよりリオのカーニバルだしそれよりフラメンコそれよりタンゴそれよりダンスやバレエだ。芸術っていうのは2面性がないと・・・影や何か隠されていないものに...人間もだけど...どうも興味がわかない。勿論未来に興味があるからこそだ。
また本当の名作曲家のオリジナル作品が少なく、当然交響曲もない。吹奏楽がピットに入った曲なんかないし、コンチェルトもない。 ガシュインやストラヴィンスキーやコープランド等アメリカとの結びつきが強い作曲家も作品がほとんどない。そういうシンフォニックな作品はみんな編曲もの。ならばオーケストラで聞いた方がやっぱり真打だろう。
どうもこれらの疑問すべて芸術的な観点でなく「やる方のご都合」で成り立ってきたようなのが嫌なのだ。お客さんだって音を、作品を聴くのでなく、孫の発表会に行くのの延長ではないのかな。
その点、権代さんの切り口と目標のはっきりしたこれから生き残って行く新曲、三善晃の情報過剰と言える名作、メンデルスゾーンの15歳の時の11本の管楽器の室内楽をかなり無理やり大編成に編曲したモノなどを前半に、後半はチャイコフスキーのバレエ音楽という3拍子の多い前半後半で相当趣の違うプログラム(管楽器に3拍子は生理的に一筋縄でいかないことがよくわかった)で気持ちの良い若い演奏家と一回目のコンサートをやれたことは僕にとっても多分演奏者にとってもよかったと思う。どれもオーケストラの音を再現しようとしなかったしテンポなどもキッチュに作ったつもりだ。
だが「吹奏楽は黙っていてもお客が入る」という主催者の幻想は無残にも崩されたお客さんの入りだった。たとえ東京でも勧進帳、忠臣蔵、にお客さんはなびくのが現実で、少なくとも内容など本当に興味があるお客さんだけに包まれたのだと思いたいが。
角田君副指揮有難う。立正佼成会の先輩サジェスチョン有難う。ただ練習空間は天井が高くないと絶対にいかん。マーチングバンドならいいけれど。
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