大阪フィル 大ブルックナー展Vol.6

2017.05.21
兵庫県 : 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
午後 3時開演(午後 2時15分開場)

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ショーソン : 詩曲 作品25
マスネ : タイスの瞑想曲
ブルックナー : 交響曲第9番 ニ短調(ノヴァーク版)

前橋汀子[Vn]
大阪フィルハーモニー交響楽団

チケット: A席5,000円 B席4,000円 C席3,000円 D席2,000円
演奏会お問い合わせ先: 兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス Tel:0798-68-0255

【道義より】

ブルックナー展が終わった。1、4、5、7、8、9番だった。
これは僕の思う彼の作品の中での上の方を選んでのことだった。
兵庫県立文化センターは今まで大阪フィルは自発的に演奏に向かう場所ではなかった
ことに疑問を感じ、僕からお願いしての企画物だった。
PACには荷が重い作品群であることは確かだし、楽しみのための音楽とは簡単には
言えないブルックナーを関東ではN響との鎌倉連続演奏会、関西では大フィルとの
連続演奏会と纏められたことには両主催者に感謝してもしきれない!奇跡だ本当に。
また今日の演奏プログラムは奇しくも3年前、僕が癌でやせ細っての
復帰コンサートをやった2014年10月のものそのままにしてもらい、
大きな弧を描いたような時間軸を持つ事が出来た。
あの時はヨレヨレで立っていることもやっと、声は殆どでなくて、N響の練習は
1日のみ。素晴しかった記憶がある。勿論前橋さんがソリストだった。
今回も実にロマンチックな音色と音楽設計は全く衰えていなかった。
事後だから書くが、女の生命力は強いとはいえ汀子さんも初めの練習で、腕は震え、
心は初めてコンチェルトをやる少女のよう?であった・・・・
そこが素晴らしいと心底思った。
60年前、僕が学生だった頃もうすでにソリストだった大過去。
30年前千鳥ヶ淵を夜桜見物で二人で歩いたことも、もうずっと過去!
今そのまんま・・・詩曲とか瞑想曲とかで共演!!・・・とても稀有な事。

大フィルとのブルックナー、今回は十分の練習を積み、楽員さんにも言ったけれど、
他力本願の指揮を試み、あの作品のあるべき姿をお客さんに伝えられたと思う。
昨日のお客さんの中には真のブルックナーファンも、ブルックナー初心者も、
また、6回のブルックナー展でだけでのブルックナー体験の方もいただろう。
その経験はそれぞれのものだ。
僕はブルックナーの宇宙的な世界に極力身を捧げたつもりだが、もちろん
足らぬところもあっただろう。もう少し長い残響があればもっとふくよかに
音が届けられたかもしれないし、朝比奈氏のように良くも悪くも
もう少し長い関係がオーケストラとあったならば更に違う世界が、
感じられたかもしれない。
しかし、時代は変わり演奏者の男女比も変わり、日本の中だけでなく
世界中が近くなっているいま、その街で生まれ育った人だけでの個性の表現は
そこに意義を失いつつある。
その点、僕の師匠チェリビダケが人でなしのように楽員それぞれの持つ音色を
全部一度握り潰し、音楽の出生の哲学を司祭のように話すことに時間を費やし、
一つの世界を打ち立てようとした方法は今こそ必要なのかもしれない。
でも僕はそれは出来ないしやりたくもない。

(そうそう、そんな内容が今も毎日のようにスタッフと連絡をしあっている
7月のフェスティバルホールでのバーンスタインの「ミサ」の主題でもある。)

僕は現場の人間を愛してしまうし、音楽第一に考えない人間とは徹底的に敵対してしまう。
「うまくやること」
すなわち、1分伸びた、予定と違う!10小節だって暗譜できないなんてことを
叫ぶ人とは全く舞台に立てないし、自分の判らない文化だから、
税金を引き上げるなんてことを言う人を選ぶ所では、難しすぎる。・・・、
もちろん橋下氏の激しい話術能力には感服するけれど。



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