夏休み2022番外編

2022.09.07

【道義より】

僕は幸いなことに長い夏休みを過ごしている。西伊豆の富士が見える場所で。
そのことは、いたってプライベートなこと。最近いわゆるインスタグラムなど
でよくあるように自分のやっていることを公に、知らない人にさえ、
「ねえ聞いて、ねえ見て見て 私こんなことしたの、こんなもの食べたの、ここに
行ってああしたの、こうしたの、写真はこれよ!」みたいなことはやる気はない。
そんなことするほどに寂しくない。
いや正直、書けば僕のここ数10年の、服を着ない生活とかする事成す事炎上モノ
だろうし。

でも昨日の「牧阿佐美さんお別れの会」に呼んでいたいただきそこで見聞きした
ことは、やはり胸のうちにしまっておくことはどうしても出来ないので書く。

新国立劇場中劇場で、一杯の人々。その後もたくさんのダンサーの卵の子供を連れた
お母さんなどが訪れていた。名のある人々からの名前が壁を覆うように張り出され、
主賓は高円宮久子さま。
祭壇には天皇陛下のお名前が飾られ、87歳だった阿佐美さんの生前にやっと間に
合ったという文化勲章が置かれていた。
届いていた案内の紙に「平服で」としっかり書かれていた。延期になったお別れの
会でもあるし、何より87歳までバレエ一筋だった生前、人前では原色の赤や緑を
身に纏っていた彼女の意志なのかな?と思い黒服ではなく素直に平服で参加した。
実は家を出る5秒前まではスカイブルーの上着を選んでいたが、なんとなく
胸騒ぎ?で白ズボンは変えなかったが上は一応黒系のものに取り換えて出発していた。
なんと!!そこに居る人全員!!黒❕全身喪服!!!。
あの案内はいったい何????。
それより何故「人生を全うした人を想い、彼女の人生を愛でる様な人々の集まり」
をなぜ黒=悲しみの色、にするのか!違和感甚だしいものがあった。

止めて欲しい!この国の人々の右に習えの行動パターン。
マスクまで黒にしたりして可笑しくないか?
自由の象徴の芸術を、理解しないで敵にしてないか?

死は悲しいものとは限らない。全員選択肢もなく生まれたら、何時かは死に終わる
だけのこと。まして事故でもなく、自分に与えられた教育と組織構築の仕事を
立派に全うできた人なら人々は、皆、祝うべきではないか!多くの艱難を超えた
のだから。

翻って思うに、最近やはり高齢で亡くなった三宅一生さんは
「葬式も別れの会もするな!」
という遺言を残し皆それに従った。
この方の場合きっと悲しみの象徴である黒一色を纏ったそれも世界中からの集団を
受け入れられなかった・・・と思う。
彼の一生は服を着る意味、創る意味とその「思考の飛翔のデザイン化」に明け暮れた
のだから。今も世界中から哀悼の文が引きも切らないと聞いている。
でも遺言は守っている。

牧阿佐美さんの場合も象徴的だが最後の作品は、母から譲り受けた創作の改作
「飛鳥」。
僕は子供のころ、たいへん小柄な阿佐美さんがトウシューズを履いて踊っているのを
舞台で何度も見ている。
その頃は当然新国立劇場もなく(「新」もう取り外してほしい)不要不急の?バレエ!
は、総てが踊りを愛する人々の手弁当で成り立っていた。
ロシア革命からの亡命バレエダンサーエリアナパブロワ門下の貝谷八百子、東勇作、
島田宏、服部八重子らと並ぶ橘秋子さんという「滝に打たれて精神統一!」という
ような教育で有名な母を持ちバレエ以外は何も考えない人生だったと思う。

その牧さんを支えてきた三谷恭三さんは、50年前は僕の家族にとって近い存在でも
あった。牧さん亡き後の牧阿佐美バレエ団、バレエ学校のかじ取りは、橘、牧が
無くなって、比較しては失礼だがイッセイミヤケと同じように難しいと思う。
これからの健康を祈るばかりだ。
翻って自分を観ると何の「しがらみ」もなく死にたいときに死ねばよいと思っているし
お別れの会でも、散会の後、美しい男女ダンサーたちと思い出話にふけり、
自撮りをし・・・何とも狡い生き方とさえ今の自分を思う。


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ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂
「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

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1冊でわかるポケット教養シリーズ 指揮者の世界
第2章は井上道義の特別インタビュー「僕が指揮者になって、今も続けている理由」

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