言うだ

2025.04.20

Bach Collegium Japan 《マタイ受難曲》埼玉公演

【道義より】

以前マーラーの2番で理想的なコントラアルトの声を聞かせてくれた林眞暎さんが参加していて「素晴らしい演奏」と知らせてくれたので鈴木雅明さん+bcjのマタイ受難曲を聴きに行きました。
まさに名演だった。

あの曲は40年ほど前ごろ小澤征爾さんが成城合唱団で何度か新日本フィルで振っていて、僕の先輩達や親族達が帰依するように係わっていた。
その頃、僕は母親がカトリック信者で洗礼や賢信を経験しキリストの最期の話や、聖書の内容はいやが上にも子供の頃から知りぬいていたので内容に説明はいらなかったのだが、練習や本番演奏を聴きながら楽しめない自分がもどかしく、この世界には足を突っ込むまい、大変すぎる!と決心して幾年月が経ちました。

多分、今回のように、
①作品に合った美しいサイズのホール、
②全ての楽器にオリジナルの音色を求めて苦節何十年のそれぞれのメンバー
③ピタリの歌手たち、
等の選定が不可能だった時代だったからだったのかなと自分の心の疑問が解けるのを発見しました。

今回、ガンバ、トラベルソ、ダカッチャ、その他のいわゆる古楽器が全く問題なく素晴らしかったし、旬でドイツ語が堪能な歌手、小さいサイズのコーラス一人一人、そして指揮も全く自然にそこに存在していました。
宗教を超えたとも思えるようなバッハの試み、受難の物語を音楽化しようとした試みの力が時代や国、人種を超越してそこにいたと思えました。
息の長い鈴木さんの努力に感服でした。

とはいえ、残った疑問はユダという存在への扱いです。
裏切りを許さない2000年余りのユダヤ教との相克、誤解をされるだろうがあえて言えばユダヤ人差別を内包するこの教義への疑問と、普段ポジティブに捉えている人類の時系列的な「発展」(楽器の改良にはっきり現れている)そのものへの疑問でした。


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