神奈川フィルハーモニー管弦楽団 みなとみらいシリーズ 第397回

2024.07.20
横浜みなとみらいホール
午後 2時開演

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道義、神奈川フィルとの最後の"狂"演

シャブリエ : 狂詩曲「スペイン」
ドビュッシー : 夜想曲/東京混声合唱団[女声Ch]
伊福部昭 : ピアノとオーケストラのためのリトミカオスティナータ/松田華音[Pf]
伊福部昭 : 日本狂詩曲

神奈川フィルハーモニー管弦楽団

チケット: S席7,000円 A席5,000円 B席3,500円  ユース(25歳以下)当日1,000円 シニア(70歳以上)各席種10%引き
演奏会お問い合わせ先: 神奈川フィル・チケットサービス 045-226-5107(平日10-17時)

【道義より】

今も日赤の窓は雷鳴と閃光。ゆっくり書きます。、また。
一夜明けてしまった。
永年、小学校時代の日記のように続けてきたブログを書くのももう数回になった。
いったい誰が読むのだろう?誰を読み手に思い描いて書いているのか?特に僕のブログは
煩わしい両方向の交流に期待しない方式だからなおさらだ。

コンサートと言うものは、どんなに周到に準備したにせよ、どんな努力が秘められていた
にせよ、人々の目前、ホールに一瞬現れ、消えていく、

「雲の上に打ち立てる城」(棟梁ソルネスの台詞)


その結果がすべてで、後々になごり惜し気に云々書くのは狡賢く男の風上にも置けない。
でもこれをもう40年ほど続けてしまった。理由があったのだ。京都市響監督の時、地元の
新聞それも文化芸術係の記者が井上の言ったことを音楽的な常識一切知らずに言葉の端切れ
を適当に縫い合わせとんでもない誤解に満ちた記事を書き、大騒ぎになってからだ。
逃げずに自分で書くほかない、文化芸術の歴史や現状を知らない他人に、プログラムの意図や、
演奏の角度、ソリスト選びの評を任せるわけにはいかないからだ。
おかげで成城、桐朋、イタリアと天衣無縫にのびていた道義も甲冑を着、また文章構成力も
おかげで次第に恥ずかしいものでなくなった。

今回神奈川フィルとのコンサートは40年前からの持病の尿路結石を引き金とする諸々の
体調不全で風前の灯、でも自分でも意味不明な情熱があり何とか無事終わることが出来た
のは「反発」現実と過去の記憶との激しい葛藤ともいえるプログラムだったからだ。

横浜に今、海ってあるのか?あるのは防波堤と、高速道路と、港の見えない公園?
これが発展、みなとみらいか!という激しい反発。

実は横浜は僕の感受性を育てててくれたところ。MPが入り口を管理していた山下大埠頭、
今もあるスカンジアレストランや絹糸会館グランドホテル周辺は文字通り水平線上に
世界が希望を見せて待っていた。白楽に住んでられたピアノの恩師山岡優子、三善晃
や矢代秋雄氏の同期のフランス帰りの先生にあたえられた沢山の夜曲の課題!なんと
目くるめく感受性のハーモニー!また発表会では何度も踊ったりピアノを弾いた素敵
な県立公会堂。帰りには中華街!元町の舶来品の数々。山手教会と外人墓地周辺の
美しさ。今はすべてが高速道路の橋桁。失われたあの横浜と、飛行機時代に生き抜こう
とする詩情も亡くなったただの街への別離。

大桟橋から僕のダンスの先生はアルゼンチンに出帆した。シャブリエのような
スペイン舞踊を彷彿とする益田隆先生のダンディーで美しいスペイン舞踊!
僕も先生の振り付けでまだ実験放送だったテレビに出ている写真が残っている。
ドビッシー夜想曲は嫌というほどチェリビダケに教えられた。セイレーンは
男を死に引き込む恐ろしい怪鳥魚!世の中では殆どみんなマーメイドちゃんみたい
な声で歌う...彼の記者を思い出す。
今回は先日、京都ではかなえられなかった低音のコントラaltoが2人居る東京混声の女性、
ソプラノもぬめぬめとした声を出してくれたと思う。僕が長年試みつづけた
限定舞台照明の夜の演出も功を奏したはずだ。
もちろん別な意味で湿気のある夜曲は伊福部の第1曲。素晴らしいヴィオラソロ
大島さん実に滑らかな流しの情景を音で表現してくれ、彼の影響がオケ全体の方向
を決めた。

4年前非常に活発で成功したN響とのオスティナートソロだった松田華音、今回は
交流あるソリストとしてふくよかさを増してパワフルだった。

終わって俺はまた病院さ。


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「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

Schedule

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