判る人にしか判らない文だが許せ

2026.02.08

【道義より】

今回のブログは判る人にしか判らない書き方になるが許せ。
もともと俺は批評家ではなく、過去と現在の周り灯篭のような文だ。

世の中を前に転がす「アイディア」というものが実際に花開くまでには
多くの人の情熱が重ねられるのだ。
昨夜、上野文化会館で観ることが出来たのは「カヴァレリアルスティカーナ・道化師」
の伝統的な組み合わせ、そこに誰も考え着かない2つのオペラを繋げる!という
「アイディア」を発見した時、演出のミキエレット氏は、自分に喝采を叫んだと思う。
以前国立劇場で見た、別の回り舞台使用の「キャンプ場のコシファントウッテ」は
思い出すだけでも反吐が出そうになる・・・その時の指揮者のモーツアルトがあまりに
悪かったせいなのか?
今回も、まわり舞台を使っていたが使い過ぎではなかった。
野田秀樹、森山開次などの水も漏らさず劇場でのリアルさを追求したものに慣れた
僕の眼には群衆の一人一人の実存が「オペラでの常識」の枠を出ない古い土俵
を感じさせたが、舞台というものの生理を思えば、これもあり!
特に【ヴェリスモ】の舞台と現実の壁をなくす、という深い所での態度が実現された。
「読み替え」とはこういうスタンスであるべきだ。
舞台では本当にパンが焼かれているがごとくだし、序曲や間奏曲の間も時空を飛べる
音楽にゆだねながら、舞台でもそれを邪魔せず(指揮者もオケも素晴らしかった)過去と
現在が交差して、詩情に充ちていた。
明るいネッダのアリアも、部屋の中での欝々した旅役者の心の中のそれとなり、野外で
あるべき群衆場面も多くが劇場の中に置き換えられ、うがった見方をすれば現実には
もう野外での祭など遠くなっている21世紀の都会の人々の心象風景の様。

田舎っぽい若いバティストーニ(失礼)の指揮は今回、ピタリとハマり、特にカヴァレリア
では長い付き合いの東フィルからテアトロマッシモ風な息つきを醸し出していて
上演4日目、水も漏らさぬアンサンブル。
僕も出ない喉からブラヴィと叫でから、彼の楽屋に飛び込んだ。

12年前、花娘の一人だった中川郁文が道化師のネッダで細身の東洋体形からも充分に
情熱的なオリーブのような響きを体現出来ていて本当に自分の事のように嬉しかった。
と同時にまたサンツッツアで非常に通るイタリアオペラに必要な強い声で、嫉妬に狂う
近寄りたくない程「埃臭いラテンの女」(もちろん一皮むけばすべての女がそうだ)を
充分歌った土屋優子さんが、昔俺が演出した同じマスカーニの「イリス」の小川で
洗濯をする村の少女達の一人だったことを発見!楽屋で僕はもっとぶつかったら良いのに
と言いながらぶつかって抱きしめた。
トリドウ役の村上公太さんもバーンスタイン「ミサ」であまりに素晴らしい声に練習中
の全歌手たちが大拍手をしていた事とか、同じくシルヴィオ役の又吉さんが主役道化師
をも超える歌声と演技を見せていてくれて
(おおおおれ先見の明があった!と喝采を・・違う・・・・
               ああ全てが過ぎ去った・・・と・・・)心で泣き笑い。

未来を担う演出助手の彌勒(森山開次演出ラ・ボエームでも活躍)君できっと人々を鼓舞
しながら、回り舞台のない練習場できっと時計を見ながらも生き生きとしていただろう。

入り口付近にメゾソプラノの永井和子さん(今は名教授)が居て、練習場にも事欠いたが
丁寧に細かく作っていた昔話や、二期会という組織の話などして
「今日のような愉しく、内容がある、公演が続くと良いですね」と語り合った。

(僕は道化師は30歳の時ニュージーランドでテレビ用に英語で初体験、その後
 この2作を50歳の頃新日フィル定期で、カニオとトリドウをニコラ・マルティヌッチ
 ネッダをタマーラ・ジャヴィシビリでやりました。)
           ありがとう、素晴らしい日曜日だった。
でも・・・・俺が関係していたら、(指揮だけでなく)全てがもっと羽目を外す方向に
行ったけどな...赤で車が来なくても渡らない空気感がシシリーじゃなかったぜ。
少なくとも俺が振っていたころは天気だと「天気が良いから早く練習止めよう」雨だと
「雨だと音楽するしかないけど気が乗らない」ある時は1番バイオリン
の若者が「俺は前で弾きたいから」と、毎日少しづつ前に来て、しまいにはコンマスの
後ろに居たのでさすがに「戻れ!」と笑いながら命令した!
猫が練習している劇場に出入りしていたし。


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