演奏と作品,作品と演奏

2026.02.18

【道義より】

サントリーホールで大阪フィルのエルガーだけのコンサート。
古くから強く信じていたことを再確認できたので書かせてもらう。

どんな名曲でもボロな曲でも演奏が良ければ音楽はそこに、そそり立つと。
演奏の良し悪しと、作品の良し悪しは別問題で、好き嫌いとも違う。

演奏者が(昨日の場合指揮者がと言い切ってもいいかもしれない)
その作品を愛し、努力を積み重ね繰り返し、熟成すると作品が何であれ、
感動を呼ぶことが可能になることがある。
愛情は他人から見て時には可笑しく、意味不明なことがままあるから、
頼りにならない。でも努力と熟成というものは「才能とは努力出来ること」
と言われるごとく万人に判りやすい価値基準だ。

尾高忠明は60年前頃、7年間桐朋学園で共に学ぶことになった文字通り「朋友」だが
未だに人間が判らない。忠の中心・・・どこ?
俺自身は色々こんがらがった理由もあり、一人になると閉じこもったり、鬱になったり
する反面、人前では何故か元気で快活に人を鼓舞する「指揮者だった」と思うが、
彼の場合一皮むかなくても、なかなか彼以外の人物が内面に人が入るのを嫌う何かがあって、
奥さんの尊子さんだって難しい面があるだろうと思っている。

しかし、どうも尾高の「エルガー愛」は彼には必要な「何か」で、この作曲家が醸し出す
不思議で不可解な一種の優しい陰鬱さ、が英国ウェールズでの彼の長年の成功をも支え、
楽団にも観客にも共感され続けている同質性があるのだと確信したのだった。
大フィルは彼ら(エルガーと尾高)の世界に良く寄り添った。さすがだった。

大フィル愛に満ちた1700人ほどのお客さんは、飛び込みで2週間の猛烈準備で挑んだ
新星メゾソプラノ林眞瑛の日本では希少な低音から高音まで充分に響く声と
音楽の内容に密着した熱唱、そして舞台上で指揮者、楽員との自然な交流に対して、
万感の拍手を捧げていた。
でも!何故字幕出さないか!!プログラムの邦訳も細字でイジメかね。

その勢いが第3番の未完の第3番交響曲に続き、マーラー10番やブルックナー10番等の
野心満々での加筆よりずっと成功していると思えるペイン、(スペインではない)の
共感ある加筆に支えられた粘着性ある(しつこい)音の構築物に不思議な満足感を
多くの観客も(僕も)持てたのだった。・・・が・・・どちらも演奏が良かったからだ!
とエルガー愛の薄い井上は感じてしまう。

・・・・僕だってエルガーは振ったが上質で情熱的な序曲「南国にて・・alassio」、
晩年の素晴らしい、片思いのような「チェロコンチェルト」それに誰でもが知っている
「威風堂々」ぐらいで比べ物にならない。
エルガー作品の演奏を重ねている尾高に3番を託したのはペイン氏だと聞く。
愛の方向性の違い。個人的にはさっぱりわからん。でも素晴らしい結果だった。
演奏家が作品の奴隷でないことは確かだったし。

ところで、

大フィルは、2013年新装なった大編成の作品にはもってこいな
大阪フェスティバルホールで定期演奏会を続けているが、持ち主の朝日新聞社も
練習にホールを優先使用させないし、今日のような作品には、シンフォニーホールと
いうもってこいなホールがあるのだからどちらでも定期演奏会を行うべきだ。
「見栄」でなく「真の愛」ある演奏会を重ねていくべき時期ではないか?

大阪が第二の都市であった20世紀も、朝比奈ブルックナーに寄りかかった寡占の時代は
過ぎ去り世の中化は変化したのだから。理想を追えば練習も公演も同じ場所で行わな
ければ個性なんぞ育つわけもないが、それが叶わぬのに「大?」フィルは何を目指すのか?
18型の弦と3管、4管の曲ばかりやるわけにもいくまい.
百貨店と銀行の時代は変わっていかざるを得ない、N響でさえ同じ悩みがあり国家的課題だ。

短い付き合いだったが大フィルとは知恵を絞ってマチネーシリーズやいずみホールシリーズ
やってたぞ!!尻ツボみで良いのかね。
府と市の合併にもオーケストラの合併にもの「NO」なのか。
松の廊下を待つ思い。 
    
 追記 エルガーがボロだとは言っていないから誤解ないように。


91VgvCQM9tL._AC_SX679_.jpg

ショスタコーヴィチ交響曲全集 at 日比谷公会堂
「今はショスタコーヴィチは僕自身だ! 」と語る井上道義2007年に成し遂げた「ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏会at日比谷公会堂」。 日本人指揮者唯一の偉業となる一大プロジェクトをぜひお聴き下さい。

降福からの道 欲張り指揮者のエッセイ集
「僕の人生、音楽だけではないが、正面から指揮をやってきたらこれほどの発見があったことに驚いている!」

25_1115_01.jpg

ショスタコーヴィチ:交響曲第13番「バビ・ヤール」

井上道義(指揮) NHK交響楽団 アレクセイ・ティホミーロフ(バス) オルフェイ...

71it4L41Q0L._AC_SL1500_.jpg

ザ・ラスト・モーツァルト

井上道義(指揮) 仲道郁代(ピアノ/ヤマハコンサートグランドピアノCFX) アン...

000000001768_c24KLy6.jpg

矢代秋雄:交響曲、伊福部昭:日本狂詩曲 井上道義&群響

未来への希望あふれる邦人作品 井上道義(指揮) 群馬交響楽団 矢代秋雄:交響曲 ...

61a475NzFzL._AC_SL1417_.jpg

ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番

井上道義(指揮) 読売日本交響楽団 ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 ...