大阪フィル 第493回定期

2015.11.27
大阪府 : フェスティバルホール
午後 7時開演(午後 6時開場)

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ベートーヴェン : 序曲「コリオラン」Op.62
ショスタコーヴィチ : 交響曲第7番「レニングラード」Op.60

大阪フィルハーモニー交響楽団

【道義より】

2日間にわたるショスタコ7番が終わった。この曲を聴きに来てくれた定期演奏会の会員さんに感謝しています。

何といっても聞くほうも共犯者の愛の我慢?が必要なこの音楽世界に4000人もの方達が居た!ことを神に感謝だ。

大フィル、心底頑張ったと思います。賛辞を送りたい。これからもっと楽しみだ。

ジジイ道義は練習でくたびれ果てていましたが。1日目からエンジン全開!

5分で終わるコリオラン序曲、は、あえて楽員だけの編成で勝負。

休憩は20分間ホワイエでゆっくり和んでいただき、プログラムもゆっくり読んでいただこうと・・・・。

NHKも録音してくれ、CD録音もやりながらこの人間賛歌の曲をやりおおせて不思議と逆に元気が出てきました。

なに?この戦争交響曲が人間賛歌?・・・・・お前戦争賛成派か!とかいう人は、無知蒙昧、単細胞です。

この作品はもちろん900日余りのペテルブルグ(レニングラード)包囲の間に書かれた曲ですが、単にヒットラードイツの迫りくる足音、その戦い、それを跳ね返したロシアの勝利!?の作品ではないのです。

こういう真の天才の作品は・・・・・

もちろん、時代背景、作品を書いた時の状況、等を知ると感情移入が触発されて
心を動かされやすくなることは事実ですが・・・・作品は
そんな簡単な作りでないところがこの音楽の深さと演奏と鑑賞の喜びの基なのです。

例えば、1楽章温かい平和の充実世界の表現の後にレハールのメリーウィドウのテーマを使っての
スネアドラマでの反復。これは「敵」の表現、確かに。でもそれはすべての人間の中にある「弱さという敵」。

知らない間に、信じるからこそする間違いが・・・始めは僅かに、しかし次第に取り返しがつかなくなる程広がってしまうという悲劇の表現。そこに書かれているのは、大きなカタルシスのある戦闘への悦びも聴こえ、物量を伴う胸のすくような集団興奮の心理も正直に描かれてそれは素晴らしいオーケストレーション。

しかし反対に自分たちで(そう、敵だけでなくで)踏みにじるのは、飽き飽きするような平和と、
日常の中にある小さな充実という怠惰。それを突き動かすエネルギーは集団の発展
という名の他者や弱者からの搾取の別名。嵐のようなマグマが吹き荒んだあとに残され聞こえるのは、静かなバイオリンや、フルートやクラリネットの最弱音でつぶやかれる個人という存在。

2楽章ではダンスが、人々の中で静かに踊られているのが聞こえ、北国の寒風の中、寂しくも孤独な作業の掛け声が聞こえ、時折大きな祭りの中の興奮した人々の騒がしい飛ぶような祭りの踊りも見える。

3楽章ではたぶん疎開したモスクワでの多くの寺院から聞こえていただろう大伽藍の鐘の音がハープとともに響き渡ると同じ北国の作曲家シベリウスの作品のような広大な世界の音の景色が現出し、熱い情熱を受け取ってくれとばかりにチャイコフスキーの弦楽セレナーデのような音型が謳い上げられる。

4楽章では、その戦争での何百万人もの人の死、しかし生まれて来たならばいつかは迎えなければならない死が、足元から甘く静かに誘惑する。まるで春が来ても解けないペテルブルグの地面や運河の中に宿っている友人たちのつぶやきのように。
最後には、そう!確かにコリオラン序曲のようにハ長調で、曲頭の温かい平和な世界が築き上げられようとするが、同時に、その未来は信じてよいのか?平安はどこにあるのか!!
と観衆に問うように、打楽器が同じ調のハ短調音階を暗雲のごとく叩き付けて終わる。
何という構想力!それを音楽化出来たなんと大きな構成力、アイディアに満ちたミクロの世界とマッシブな世界の融合!

今回初めて発見した小さな細部、なぜかある部分でオーボエの和音が1番が上、2番が下という伝統を破ってることに気づかされた・・・・それは上の音にソロ的な表現を避けてほしく、どちらかというの下のほうに支えとして存在感がほしいということの証拠。その職人芸に舌を任された。

こういう内容をショスタコは12番交響曲では簡潔にさらにはっきりと描くことになる。その時は「敵」は内面化されず暗号化されたスターリンとソヴィエト体制に向いているが・・・・。


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