むっちゃん

2025.10.31

【道義より】

通崎睦美というシロフォン奏者がいる。今の時代では珍しいソロ木琴奏者で30日
サントリーの小ホールを一杯にし、忘れがたい演奏と全く飽きないプログラムを作り、
トークも一流という京都ど真ん中なひと。

知り合ってから35年が過ぎたが、今も「むっちゃん」と呼んで違和感がない
チャーミングな娘!だ。いわれのある楽器を駆使する「木琴奏者」と言えば唯一の人。


偶然だが、26日に珠玉のラベルのピアノ曲を超一流のクオリティーでかなで、合間に
観客に郁代さん流の語り口で繋げるという他の誰にも出来ない詩的で妖しい一夜を
東京文化会館小ホールを満たしていた仲道郁代さんもそうだった。
一朝一夜では出来ない手練のリサイタル。
郁代さんの場合長年「ピアニストなんだからピアノを弾くだけで勝負するべきだ!」という
業界の人々の常識と善意の雑音?に負けず、長年、台詞付きの演技さえ交えて作品の
背景や作曲家の真実に迫る努力を続け、遂に前人未踏な孤高な世界を打ち立て今や
夜の女王。
初めの頃は彼女のやる気に押されて「聞かされる」ことが無かったとは言え、今や洗練され
今や本当の一流な言葉と音楽の二刀流!・・・最近よく聞くあれかとか言うな!

通崎睦美は、更によく売れて数々の賞も受けた本も出していて(「天使突抜1丁目」は
彼女の住んでいる京都の実際の住所名)朝早く起きて骨董市に通い続けた結果の銘仙の着物
コレクションも素晴らしい。知り合った若い頃は普通に着物で自転車に乗っていた。
コンサートでもセンスの良さがにじみ出て、実に頭が良く、気が利き、気持ちよく、
京都女の良い面が演奏でスーラの絵画の様に旋律が流れ、リズムが踊る。
間違って受け取ってはいけない、彼女はインスタグラムで自撮りに明け暮れるような生き方
をしてきたのではない。神に与えられた自分の器を客観視して「これしか出来ない、これを
やることは自分に課せられている」と藻掻きながらの感動的なコンサートを続けてきたのだ。

今回の数々の編曲の技が超プロフェッショナルな松園洋二というピアニスト(逆か)が、
また素晴らしい。きっと姉御むっちゃんにお尻を叩かれているのだろう。良いじゃない!
でも、一番恐ろしいのは「むっちゃん」に平岡養一のシロフォンを紹介したのは、紙恭輔の
木琴コンチェルトの奏者として彼女に白羽の矢を立て、あの楽器で弾いてくれと頼んだのが
若かった僕だったことだ。彼女はそこから一つの道を歩み始めたのだから。
「幸福な」出会いだったようだ。


今、どうも高市首相もすぐにこういう存在になると予想できる展開を見せている。
そう、ずっと昔からこの国の娘たちは男どもを手の中で動かし続けているのだ。逆か?

こうして2人をいや3人を並べることこそ恐ろしい気もする・・・・。Donner Wetter.


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