東響 東京オペラシティシリーズ 第133回

コンサート終了。他の指揮者にはできない種類の良いプログラムだったと自負している。
武満徹の映画音楽２曲は道義おはこ中のおはこ、このような作曲家が、僕と同時代に居て、
キザーな兵隊風服や、コムデギャルソン以前やけに黒ずくめだったファッションなどで、
楽しませてくれながら映画音楽と現代音楽と執筆活動のみで（大学等で教師をせずに）
親子３人生活を成り立たせ,御代田にすてきな別荘さえ建てた実力が本物の独学の天才！
どんなに憧れと無理やりな親近感を持っていた突然亡くなるまでの２５年間だったことか！
いまだに日本でワルツを書けたのはこの人だけ。ボクシングを音画にするなんて安藤忠雄も
びっくり。
そこにプロコフィエフ風３拍子が書き込んである拙作「鏡の眼」！を並べた。
初演の頃の不必要な羞恥心もなくなり、この曲にゆだねたオーケストラという生き物の
持つ不思議な音表現、地平線や上下もない広い世界。皆さんどう思われたか？　　
チェレスタと弦のフラジオレットの夢遊病のような部分に「ハッピバースデートウーユー」
が隠し自分で自分を祝っているナルシスなションベン小僧も赦せるようになった
ションベンジジイ。

これからのチェロの音楽を高める未来のある上野君、余計な逡巡や衒いのないチェロに
乾杯。

交響詩「南国にて」はアラッシオ」と言う港町ジェノバから遠くない副題がついている。
地中海のこの村には井上の５０年前スカラ座コンクール優勝の後訪れた親近感も背中を
押してくれた。
作品で表現された嵐のうねりは昨日の台風余波の方が激しいと思えるが、嵐も凪も、
石の建築と過去を水に流さない文化、乾燥した海と陸のイタリアへの英国からの最大の賛歌
が、ミューズ（川崎）に育まれ、武満メモリアルに、皆の腕からお客さんの耳に吹き込まれた。

俺の結石は早く流してほしい。